上田市
株式会社 林工務店
株式会社 林工務店 (上田市)
上田市 / T邸 / 夫、妻、長女、次女、長男、夫の父、夫の母
先々代から受け継ぐ古民家を再生し、親子三代が暮らすT邸。長年災害や風雨を耐えてきた家屋には歪みが生じ、建て替えか再生かという選択を迫られた。ちょうどその頃、仕事上で付き合いがあった林工務店・林社長が同家を訪れることに。古民家再生を数多く手掛けてきた林社長が、「これほど素晴らしい素材を使った古民家にはなかなかお目にかかれない」と瞠目するほど、T邸は貴重な天然木と匠の技の結晶だった。その言葉に背中を押されたTさんは再生を決意。「この家を私たちの代で終わらせず、後の代まで残すべきだと思いました」。
床下の基礎を強化する揚舞工事、庭を再利用するために建物全体を移動させる曳家工事に始まり、良質な壁以外の壁をすべて取り払い、構造材を垂直・水平に修正するという大掛かりな工事を敢行。現代の暮らしに即した2世帯分の間取りを実現すべく、約89坪から97坪に増築した。おかげで2階には子どもたちがのびのび過ごせるフリースペースが生まれている。
内装には、建築関係の仕事に従事してきたお父さまのアイデアが随所に。玄関に施した漆喰格子の壁は、城の狭間をイメージ。幅広の赤マツ材の床と調和し、堂々たる趣き。リビングはダイナミックな吹き抜けに。2階天井も取り払い、飴色の梁や柱を露出させた。「明治四十二年」と墨書された梁が現れたのも、感慨深い出来事となった。
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インテリアにモダンデザインを取り入れたのは、奥さまのアイデア。随所にステンドグラスやモザイクタイル、ガラスランプを散りばめ、落ち着いた和テイストの中に洋のアクセントを加えている。
断熱材・ネオマフォームやLow-Eガラスで断熱性能を高めた反面、必要以上の気密性は求めなかったというT邸。「調湿性の高い珪藻土の壁と風通しの良い造りで、“呼吸する家”となりました。以前の賃貸住宅は結露がすごくて妻や子ども達が咳をしていましたが、ここではその症状も治まっています」とご主人はいう。
1階が親世帯、2階が子世帯に分かれた二世帯住宅だが、中央に吹き抜けがあるおかげで常にお互いの気配を感じられる。「子ども達はよく両親に遊んでもらっています。田舎町で祖父母とともに過ごせるのは、子どもたちの成長にとっても大きなプラスですね」とご主人。三世代の絆を深めてくれる住まいは、これからも変わらず家族を見守り続けていくはずだ。
※リノベーション面積/323.07㎡(97.7坪)【1F/187.26㎡(56.6坪)、2F/135.81㎡(41.1坪)】
(ナガノの家 リフォームリノベーション 2017-2018 vol.1掲載)
【日本建築の美を追求した外観】以前のT邸。築造当時は蚕室があったそうだが、関東大震災の被害で腰屋根を撤去したという経緯からもその歴史が感じられる