安曇野市
竹内裕矢設計店
竹内裕矢設計店 (安曇野市)
塩尻市 / I邸 / 夫、妻、長女、犬1匹
3人と1匹が
それぞれ心地よく過ごせる
ワンフロア7.5坪の小宇宙
旧街道のほど近く、見事な本棟造りの家々が軒を連ねる住宅街にその小さな家はある。幅5.5mに奥行きは4.5mほど。この可愛らしいスギ板張りの家に3人家族が住んでいると聞いたら、ほとんどの人が驚くかもしれない。
名古屋から移住してきたIさんだが、この土地はご主人のお父さまのご実家。子どもの頃から毎年数回は訪れてきた、思い出が詰まった場所だ。「移住は晴天の霹靂だったけど、自然の環境の中で明るい仲間達との農作業はすっごく楽しい」と話す奥さまも、信州暮らしにすっかり馴染んでいる様子。当初は築120年ほどの旧宅をリノベーションするつもりだったが、「傷みが激しかったし広すぎる、光熱費もかさむだろう」と建て替えに転換。設計を担当した竹内裕矢さんから数プランが提案される中、奥さまが最も気に入ったのが2階にLDKを配したこの家。「竹内さんがつくってくれた模型がとにかく可愛くて、迷いはありませんでした」。
小ささに目を奪われがちなI邸だが、実は最初から小さな家を希望したわけではない。「2階キッチンはどうしてもコスト増になってしまう。予算内に抑えるために削れるものは削り、徹底して合理化を図った結果です」と竹内さん。例えば建物高を抑えたのは、4mの柱材で2階までの高さを賄うため。とはいえLDKは船底天井で、圧迫感はまるでない。また玄関ホールは階段下を活用、子ども部屋への廊下は脱衣室を兼ねるなど、限られた空間ゆえにいかに効率よくスペースを使うか、工夫が随所に施されている。
料理好き、もてなし好きのご夫妻らしく、LDKの約半分はキッチンとダイニングと、面積の割に広いスペースを確保。ライフスタイルを尊重し、空間の取り方にメリハリをつけているのも暮らしやすさのポイントといえる。ご主人は、「いつか自作のブドウでワインを仕込み、振る舞う日が楽しみ」とセカンドライフの展望を口に。夢に一歩踏み出したご夫妻の暮らしをあたたかく包む、懐の深い小さな家だ。
(ナガノの家 Vol.16 2021年 秋・冬号掲載掲載)
ご家族が家にいる時間の多くを過ごすのが、2階をまるまる使ったLDK。大振りなキッチンとダイニングが空間の半分を占めるのは、「料理が好き!みんなでワイワイ食卓を囲むのも大好き!」な奥さまの希望から。「面積から考えると贅沢なほど空間を取っていますが、我が家にはベストバランスです」
安曇野市
竹内裕矢設計店