松本市
源池設計室株式会社
源池設計室株式会社 (松本市)
伊那市 / S邸 / 夫、妻、子ども
男女両方の視点が備わる
夫婦だからこその設計力
真新しい住宅が建ち並ぶ中、その家は、周りとはどこか違う空気をまとっているように感じた。伊那市のSさん邸。手掛けたのは、ともに一級建築士である轟真也さん、洋子さんご夫妻が営む源池設計室。当たり前のようにハウスメーカーに頼もうとしていたSさんご夫婦だったが、源池設計室の住まいの実例写真を見て気に入ったのがきっかけで依頼することに。「建築家のご夫婦なので、男性と女性の両者の目線で設計してくれるから、使いやすい家になりそうだって思ったんです。私たちと轟さんの趣味がよく合ったのも決め手でした」と話すご夫妻。
轟さんが最も大事にしているのは、建て主とのコミュニケーション。家族みんなの1日の生活パターン、持っている家具や洋服などの種類・量も細かく聞き出し、会話の中に漏れ出た些細な希望もすくい上げる。同時に、轟さんたちの家づくりに対する思いも伝わるよう、顔を合わせて一緒に話す時間は惜しむことをしない。「Sさんは当時20代で、お子さんが生まれたばかり。子育てを楽しめる家を建てたいという思いを感じました」と洋子さん。一緒に土地探しから始め、時間をかけて決めたのは市内で人気の地区。「ちょっと不思議な地名だったのが気になって、市役所まで行って由来を調べたんです。そうしたら、400年以上昔から続く由緒ある地名で、陽のよく当たる場所という意味だとわかって。それなら、その日当たりのよさを生かそうと」。選んだ土地に実際に立ち、そこから見える駒ヶ岳や経ヶ岳の美しい山々の眺めも生かしたいと考えた。
プランを立てる段階になると、洋子さんいわく〝一粒で二度おいしい〟源池設計室ならではの工程へと入る。まず、夫婦それぞれお互い相談せずに別々のプランを考える。施主に見せる前には確認し合って微調整はするものの、施主には両パターンを見てもらう。そこから施主と真也さん、洋子さんの〝家づくりのキャッチボール〟が始まる。「それぞれの案について住まい手さんの思いを聴き、更にプランを練っていきます。まったく別の新しいイメージが浮かんでくることもありますが、ご家族の考えを引き出すきっかけにもなるんです」。自分の案が採用されず、夫婦がギスギスした雰囲気にはならないのだろうか…。「打ち合わせを繰り返して、より洗練させていく中で、最終的にはお互いに納得できる最高の形にできあがっているので、そういうことはないですね(笑)」。
共働きのSさんご夫婦の住まいでのポイントは、「効率的な家事動線と、時間が限られる中でも家の中をきれいに保てること。それに、子どもの手に触れるものはなるべく自然素材にと心掛けました」。ご夫妻のセンスが光っていたこともあり、希望を全部取り入れながらも、まとまりのある家族みんなが住みよい家が完成した。
暮らし始めておよそ2年、無垢材の床の気持ちよさを感じながら、暖かい部屋でストレスなく生活しているSさん。大開口から庭を望めば、移ろう季節を感じられる。植栽の入った庭は、竣工後半年経ってから轟さんに依頼した箇所。「外からの視線なども配慮すると共に、タープを張ってバーベキューをしたいという夢も聞いていたので、植栽やゾーニングも含めた外構プランを」と洋子さん。例えば、悩んだ末につくることを決めたガレージは、玄関からの動線を考えた配置になっているだけでなく、ファサードが見た目にも印象的だ。
こだわり抜き、Sさんの暮らしにきちんと寄り添った住まいだからこそ、ほかとは違う空気感が生まれたのだと実感できた。
外観正面から見ると、ガレージから母屋まで、横一直線に伸びた屋根で繋がり、スッキリとした印象。2階ホールの窓は縦にデザイン。ふんだんに使った木材が外観を柔らかくまとめ、背景となる山々の景色と見事に調和する
松本市
源池設計室株式会社