☎0120-470-189
御代田町 / 藤森邸 / 夫、妻
アラ還の移住計画は
度胸と信頼、楽しむ心
20年間大阪の中心地で営んできたギター工房ごと、移住を選択した藤森さんご夫妻。以前の家は「3階建てで鉛筆みたいなシュッとした家」だったといい、階段の上り下りなど、間取りも立地も老後向けではなかったという。
「もともと近所の人がふらっと来るような店ではないので、土地を選ばず成り立つ仕事だとは思っていました」とご主人。60歳からの人生は、「飛行機で言えば、着地に向けて緩やかに進路を定めていく結びの部分。いまさら新しい商売もできないけど、このまま大阪で暮らし続けていくには先が見通せすぎてしまって。『この辺でちょっと一発変えてやるか』という思いもありました」。
アクセスが良く干渉の少ない土地柄。自然豊かで過ごしやすい環境。条件を絞っていく中で行きついたのが御代田町だ。晴天率の高さや利便性、暮らしが楽しくなりそうな住環境が魅力的に映った。「ずっとネットを見ていたら、『そんなに気になるなら一回行ってみよう』と妻に言われて。それもそうだなと、初めての軽井沢旅行が決まりました」。そんな、〝ちょっと行ってみるだけ〟だったはずが、紹介してもらった土地から見えた浅間山にひと目惚れ。「迷っている時間はない」と、トントン拍子に話が進んでいった。
とはいえ、ご主人は寒さが大の苦手。「音楽仲間に設計士の友人がいて、『信州に移住しようと思って』って話したんです。中古別荘を買ってリフォームとか…と言ったら、『それは寒すぎる』と一刀両断されました」。健康に暮らす、快適に暮らす、ひいてはそれが省エネにつながる。「それが世界では当たり前だけど、日本はかなり遅れているというのが衝撃でした」。高断熱・高気密は高級でも特別でもなく世界のスタンダード。そんな話から紹介してもらったのが、しなのいえ工房の小嶋さんだ。送られてきた資料はボリューミーで、壁の断面図や数字などテクニカルな情報が満載。夏は灼熱、冬は寒い大阪の家に嫌気が差していた藤森さんにとって、にわかには信じがたい資料もあったというが、新居で一年過ごした今、それが間違いでないことを実感した。
「大震災を体験しているので、暖かさと同じくらい耐震性も重視しました。構造や機能にこだわったので見た目の派手さはありませんが、家の中に入ると冬も夏もホッとできるのが嬉しいです」。これから迎える人生の結びに向かって、自慢の我が家は豊かな音色を紡ぎだすパートナーになってくれるはずだ。
(ナガノの家 Vol.15 2021年 春・夏号掲載掲載)
ご主人の仕事場、ギター工房「JoeForestGuitarHouse」。広さを重視した作業場は使い勝手がよく、床板はご主人がアレンジしやすいようあえて合板仕上げに。「天井はギリギリまで高さを取ってもらいましたが、音の響きも思い通りです」